静岡第一クリニック

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  4. 「自転車とEDリスク」関連はあるのか(メディカルトリビューンより)

泌尿器疾患や性機能障害には影響しないということを知っておくことは重要」と指摘。「男女ともにサイクリングによって心血管へのベネフィットが期待できると考えられ、泌尿器や性機能に悪影響をもたらすのではないかとの心配は不要

サイクリストの性機能や排尿機能をランナーと比較

自転車運転と勃起障害(ED)などの性機能障害や排尿障害のリスクとの関連をめぐっては、リスク上昇が認められたとする結果が報告されている一方で、関連を否定する報告もあり、長年にわたって議論されてきた。こうした中、世界各国のスポーツクラブに所属する男女のサイクリストを対象に実施された2件の最新研究の結果が米国泌尿器科学会(AUA 2017、5月12~16日、ボストン)で発表された。いずれも米・University of California, San Francisco のMohannad Awad氏らの研究グループが、サイクリストの性機能や排尿機能をスイマーやランナーと比べたもの。果たして両研究の結果は―?

性機能はランナーよりも良好、前立腺症状も差なし

サイクリングにはさまざまな健康効果があることが知られている(関連記事「通勤手段と全死亡、がん、CVDの関係は?」)。一方で、日常的に自転車に乗っていると、サドルで会陰部が圧迫され続けることになるため、男性ではEDなどの性機能障害リスクが上昇し、女性でも性機能に悪影響を及ぼす可能性が示唆されているという。

そこでAwad氏らは、インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の1つであるフェイスブックを介して英語圏のスポーツクラブに所属する男性アスリートから研究参加者を募集。参加を希望した5,851人を対象に、SHIM※1を用いて性機能を、I-PSS※2およびNIH-CPSI※3を用いて前立腺症状を評価した。

解析対象は、有効回答者3,919人(67%)のうち日常的に水泳やランニングをする機会がないサイクリスト1,642人、日常的にサイクリングをする機会がないスイマーまたはランナー(対照群)975人。年齢、BMI、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、喫煙で調整後のSHIMスコアは、対照群の18.9点に対してサイクリストでは20.1点と高く(P<0.01)、I-PSSおよびNIH-CPSIのスコアは両群間に有意差がなかった。

また、①サイクリング歴が2年以上②サイクリングの頻度が週3回以上③1日当たりの走行距離が25マイル(約40km)以上―の全てを満たした高強度サイクリストでは、強度が低いサイクリストと比べてSHIMスコアが有意に高かった(P<0.01)が、I-PSSとNIH-CPSIのスコアについては有意差がなかった。ただ、対照群と比べてサイクリストでは会陰部の感覚が麻痺するリスクが有意に高かった〔オッズ比(OR)10.6、P<0.01〕。なお、サドルのタイプの違いによる結果への影響は認められなかったという。

「心血管にベネフィット、泌尿器疾患や性機能障害の心配は不要」

さらにAwad氏らは、スポーツクラブに所属する女性アスリート2,691人を対象に、サイクリストとスイマーまたはランナー(対照群)との間に性機能や排尿機能などに差はあるか否かについて検討した。解析対象はサイクリスト群658人と対照群1,013人で、性機能はFSFI※4を、排尿機能はI-PSSを用いて評価した。

その結果、女性においても対照群と比べてサイクリスト群ではFSFIスコアが有意に高く、尿路症状については両群間に有意差はなかったが、尿路感染症リスク(OR1.4)および会陰部の感覚が麻痺するリスク(同7.0)が高まる可能性が示された。また、高強度サイクリストでは、強度が低いサイクリストと比べて会陰部の感覚が麻痺するリスクが高かった(同1.6)。なお、女性においてもサドルのタイプの違いによる結果への影響は認められなかった。

以上の2件の研究結果について、AUAのスポークスパーソンで米・Southern Illinois UniversityのKevin McVary氏は「サイクリングは趣味として、またスポーツ競技として人気が高まりつつあるため、泌尿器疾患や性機能障害には影響しないということを知っておくことは重要」と指摘。「男女ともにサイクリングによって心血管へのベネフィットが期待できると考えられ、泌尿器や性機能に悪影響をもたらすのではないかとの心配は不要」とコメントしている。

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