初回心筋梗塞後の男性において、勃起障害(ED)治療薬であるPDE-5阻害薬の使用が全死亡および心不全による入院のリスク低下に関連することが、スウェーデンのコホート研究で示された。同国Karolinska InstitutetのDaniel Peter Andersson氏が第66回米国心臓病学会年次学術集会(ACC 2017、3月17~19日、ワシントンD.C.)で発表した。なお、詳細はHeart(2017年3月9日オンライン版)にも掲載されている。
初回心筋梗塞患者4万例を3年間追跡
EDは、健康な男性において心血管疾患リスク上昇との関連が指摘されている。しかし、心筋梗塞後のED治療と心血管アウトカムや死亡リスクとの関連を検討した研究はなかった。
そこでAndersson氏らは今回、スウェーデン国内の全病院の診療記録を収録したデータベースを用いた後ろ向き研究で検証した。解析対象は、2007~13年に初回心筋梗塞で入院した80歳未満の男性で、血行再建術の施行およびED〔PDE-5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル)またはアルプロスタジルの処方歴と定義〕の既往がない4万3,145例とした。
PDE-5阻害薬の処方回数増えると死亡リスクもさらに低下
初回心筋梗塞後、平均3.3年の追跡期間中に7%がED治療薬(PDE-5阻害薬92%、アルプロスタジル8%)を処方されていた。糖尿病、心不全および脳卒中などの心血管リスク因子で調整後の全死亡リスクは、ED治療薬の非処方群に比べて処方群で33%低下していた〔ハザード比(HR)0.67、95%CI 0.55~0.81〕。ただし、アルプロスタジル処方と死亡リスクとの間に関連は認められなかった(同0.96、0.63~1.44)。
また心不全による入院リスクも、ED治療薬の非処方群に比べ、処方群で40%低下していた(HR 0.60、95%CI0.44~0.82)。さらに、ED治療薬のうちPDE-5阻害薬の処方回数が1回、2~5回、6回以上だった群では、アルプロスタジル処方群と比べ死亡リスクがそれぞれ34%(同0.66、0.38~1.15)、53%(同0.47、0.26~0.87)、81%(同0.19、0.08~0.45)低下することが示された。
「心筋梗塞後のPDE-5阻害薬使用は安全」
今回の研究結果について、Andersson氏は「後ろ向き研究であるため、因果関係を示すものではない。PDE-5阻害薬を必要とする男性は性的に活発であると考えられるため、全般的に健康なライフスタイルを送っている可能性もある」と慎重な解釈を求めた。その一方で「サンプルサイズが不十分であるため慎重に結果を解釈する必要はあるが、初回心筋梗塞後にPDE-5阻害薬を処方された男性では、用量依存性とみられる死亡リスクの低下が示された」として、初回心筋梗塞後の男性に対する同薬の使用は安全なだけでなく、有益である可能性もあるとの見解を示した。
さらに、これまでの研究では健康な男性でED治療薬と心血管疾患リスクとの関連が指摘されていたのに対し、今回は心血管への好ましい影響が示唆された点について「PDE-5阻害薬は当初、狭心症治療薬として開発された。また、先行研究ではPDE-5阻害薬の使用が左室負荷を軽減する左室の血圧低下に関連することが示されており、こうした作用が今回の結果に寄与している可能性がある」と考察している。