厚生労働省が平成29年に発表した「我が国の人口動態」によれば、日本人の死亡原因の第1位はガン(悪性腫瘍: 28.7%)でした。ただ、第2位は心臓病(心疾患: 15.2%)で、1つ飛んで第4位は脳卒中(脳血管疾患: 8.7%)でした。心臓病、脳卒中という「血管の老化」が関わる病気が日本人の健康を脅かしています。
日本人の主要な死因を引き起こす「血管の老化」とは、どのような仕組みで起きるのか?血管の一番内側で血液に接している「血管内皮細胞」の老化について考えてみます。
私たちの血液中にはコレステロールが存在します。このコレステロールは血管内皮細胞のすき間にもぐり込むと、血管の壁にくっつくという特性を持っています。そして血液中のコレステロールが多くなるにつれて付着する量も増え、次第に血管の壁はもろくなります。
このような状況に陥ると、体の不要物や異物を食べる免疫細胞「マクロファージ」が登場します。マクロファージは血管の壁にくっついているコレステロールを「異物」として認識し、取り除くために血管の壁に侵入してコレステロールを食べ始めます。
ところが、食べ過ぎで太ったマクロファージは、血管の壁から出られなくなります。そこでSOS信号の様に「サイトカイン」という物質を放出し、さらに血管の壁を傷つけます。私たちの体は血管の傷口を治すべく、血を固める働きを持つ血小板に働くよう指示を出します。
ただ、血小板によって傷ついた血管を塞ぐと、血栓と呼ばれる血の塊が生まれてしまいます。血栓は血の流れをブロックしてしまうため、栄養が行きわたらない血栓から先の細胞は死んでしまいます。この血栓が心臓に飛んで行くと心筋梗塞、脳に飛んで行くと脳梗塞が発症するという仕組みです。
また、動脈の老化である動脈硬化は、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤などの原因になり、中年以降に検査などで問題となることが多いですが、実際には20~30歳頃から動脈硬化が始まり、50~60歳頃に血管が狭くなり、症状や病気として表面化します。動脈硬化は20~30年という長い期間を「静か」に「無症状のまま」、私たちの体を脅かしているのです。
もちろん、そのリスクから身を守る方法はあります。具体的には、生活習慣病の予防が血管の老化防止(アンチエイジング)につながります。人間ドックや健康診断で「血管年齢」を計測する検査などを受けてみることもよいでしょう
※生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」のこと