静岡第一クリニック

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  4. EDは性機能の障害にとどまらず、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「動脈硬化」の前ぶれでもある

1130万人もの日本人男性が悩むといわれる勃起障害・勃起不全(Erectile Dysfunction、以下ED)。「年のせいだから仕方ない」と考えて放置する人が多いが、EDは性機能の障害にとどまらず、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「動脈硬化」の前ぶれでもあることが分かってきた。昭和大学藤が丘病院副院長・泌尿器科教授の佐々木春明氏に、EDと動脈硬化の関係や、新しいタイプのED治療薬などについて聞いた。

発症年齢のピークは「30~40代」「50~60代」の2つ
――EDといっても、ピクリとも勃起しない人もいれば、勃起はするが萎えるという人もいて、幅があります。どのような状態をEDと呼ぶのですか。

EDとは、満足な勃起が得られない、あるいは勃起を維持できず性交で満足感を得られない状態をいいます。「性交はうまくいかないけどマスターベーションは問題ない」「5回の性交のうち4回はうまくいく」という人もEDに該当しますし、「性交はできるが硬さが足りない」という人も軽症のEDといえます。

―EDは「年のせい」で片づけられがちですが、加齢だけが原因なのでしょうか。

図1の通り、EDになりやすい年齢には2つのピークがあり、原因がそれぞれ異なります。第1のピークは30代後半から40代前半に多い、精神的な理由による「心因性ED」です。この年代は子作り世代でもあり、妻からは「明日は排卵日だから」と「仲良くする日」を指定され、親からは「孫はまだか」とプレッシャーをかけられます。高齢出産に該当する場合は特に、精神的重圧も強くなります。そんな状況で勃起するのは難しい上、一度うまくいかないと余計に萎えてしまいます。

第2のピークは、50代から60代にかけて起きる「器質性ED」です。これは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、メタボリックシンドローム、肥満、加齢などにより、血管が硬く、もろくなる(老化する)ことが原因です。

性的な刺激を受けると、脳から「勃起しなさい」という指令が出ます。それが勃起神経に伝わって陰茎動脈に血液が流れるのですが、老化した血管は硬くて血液がうまく流れ込みません。十分な血液が届かないので、勃起しても硬さが足りない、あるいは勃起しない状態に陥ります。

(資料提供:昭和大学藤が丘病院泌尿器科)
――動脈が硬くなるということは、器質性EDは動脈硬化と関連があるということですか。

その通りです。陰茎動脈が硬いということは、EDの人は動脈硬化を起こしている、あるいは起こしかけているということを意味します。理由は、他の動脈に比べると陰茎動脈が細いからです。

血管の太さは、陰茎の根元が1~2mm、心臓の冠動脈の根元は3~4mm、頸動脈は5~6mmといわれます。動脈硬化は細い血管から先に起こるため、真っ先にやられるのが血管の細い陰茎です。狭心症や心筋梗塞が起きる前から、陰茎では動脈硬化がひそかに進行しつつあるのです。

このことは、図2を見ても明らかです。左の健康な人は、血管が徐々に細くなっていきます。それに対して、右の糖尿病でEDのある人は、太い血管は同じなのに、細い血管が少しギザギザして先細りしています。これが動脈硬化なのです。こうなると、血液が陰茎の先まで届きません。

陰茎動脈の太い部分は左右いずれも問題ないが、糖尿病でEDのある患者は海綿体動脈が閉塞し、先細りしている(資料提供:昭和大学藤が丘病院泌尿器科)

日経Gooday(グッデイ) より