静岡第一クリニック

  1. TOP
  2. お知らせ一覧
  3. ニュース
  4. 女性の性欲障害に対するテストステロン療法
テストステロン(男性ホルモン)は、「男性専用」ホルモンではありません。

女性におけるテストステロンの分泌

女性も副腎や卵巣でテストステロンを分泌しています。血中テストステロン値で比べると、男性の5~10%(1/10~1/20)と言われています(共に健常成人の場合)。

男性の場合、テストステロンの分布には日内変動があり、居住地域によっては季節変動もあるという指摘がありますが、閉経前の健康な女性のテストステロン分泌が例えば月経の周期と共に変動するかと言いますと、それほど大きな変動は見られないようです。

女性におけるテストステロンの役割

男性ほどでなくても、女性も骨格や筋肉は発達しますし、男性的な思考をしたり、性衝動に駆られることがあると思います。これらのメカニズムは複雑で一概に言えませんが、一因としてテストステロンが関係していると思われます。

女性の性欲・性衝動におけるテストステロンの役割

また、テストステロンの一般的な生理作用の中には性衝動を高める働きがあります。テストステロンを「天然の媚薬」と考える所以ですが、男女にかかわらず恋愛のパートナーがいない人はテストステロン・レベルが高いという報告があります。現代風の表現で言えば、いわゆる「肉食系」の人は男女にかかわらずテストステロンの分泌が活発なのかも知れません。

女性に対するテストステロン投与の現状

女性に対する高用量なテストステロンの長期連続投与は、男性化(体毛が濃くなる、声が低くなる等)をはじめ、体内でテストステロンが代謝されて出来たエストロゲン(女性ホルモン)のレベルが結果的に高過ぎる状態になる懸念があり、消極的な意見が多いのが現状です。今のところ長期的な安全性評価の情報は入手できておりません。 しかしながら、後述の単回投与のように、生理的範囲内で低用量・間欠的に投与すれば、限りなく安全に、テストステロンのメリットを享受できるものと、今後の検討が期待されます。

なお、頭髪を除く体毛の育毛に対する男性ホルモンの塗り薬は、既に本邦でOTC(市販薬)として50年を超える長年の実績を積んでいますが、重篤な副作用の事例はございません。弊社製品「グローミン」にも、女性の恥部無毛症の効能が認められています。

女性不妊に対するテストステロン療法

海外では、体外受精の低レスポンダーにおいて経皮テストステロン投与が妊娠および生存出生率を増加する、という報告があります。

本邦においても、早発卵巣不全の不妊治療にグローミンを用いた経皮吸収のテストステロン投与で、88症例中23例で卵を獲得、19例中16例で受精、7例が妊娠に至ったという発表がありました(第64回日本産科婦人科学会学術講演会・2012年4月13~15日、特別講演「早発卵巣不全の病因・病態・治療に関する研究」聖マリアンナ医科大学 産婦人科・石塚文平 特認教授)。

女性の性欲障害に対するテストステロン療法

女性の性機能障害の一つに性欲障害があります。女性の性欲障害に関する研究で、性交時に血中濃度のピークを迎えるよう、あらかじめ性交の数時間前にテストステロンを単回投与した女性の性的感覚や性欲が有意に上昇したという報告があります。「女性向けバイアグラ」と話題になった海外で開発中の薬剤は、女性向けテストステロン製剤のようです。

更年期や閉経女性のQOLに対するエストロゲンとテストステロンの併用療法

本邦では女性の性機能障害は性交疼痛(性交時の陰部の痛み)が最も多く、欧米で問題とされている性欲障害は日本ではあまり大きな問題にされていません。性に対する国民性の違いから、潜在的な問題が医学的に顕在化しない背景があるのかも知れません。

そのため、本邦で日本女性にテストステロンを必要とするケースは、ホルモン補充療法だけでは十分に改善しない更年期障害の症状をはじめ、閉経後のQOLの低下を補うものが中心です。なるべく性機能の問題を前面に出さず、主に無気力や抑うつ等の精神症状に対する補完的な対応として検討されています。

そのような観点から、国内では低用量なエストロゲン(女性ホルモン・卵胞ホルモン)とテストステロンの併用による有用性が報告されています(下記リンク参照)。

 


テストステロンによる「性欲」と、エストロゲンによる「性欲」は別?

「女性ホルモン(エストロゲン)が媚薬になるか?」と申しますと、テストステロンによる積極的な性衝動でなく、肉体面、精神面で「性行動の受容性を高める」作用と言われています。

エストロゲンは?

たとえば、肉体面ではコラーゲンの分泌を促し皮ふの張りを良くして、性交時に濡れやすくなり、子宮内膜を厚くして妊娠するための準備をしますし、一方、精神面では受容的な(優しい)気持ちになり、パートナーを受け入れやすい状態になるわけです。

エストロゲンの影響?

人間の性行為は動物の交尾行動よりも複雑ですから決して一概に言えませんが、排卵期から生理前の時期に「さびしい気持ち」になったり「気分になりやすい」女性は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。また、「恋愛中は肌のコンディションが良く、パートナーとのセックスも頻繁でないと気分的にすぐさびしくなってしまうが、パートナーのいない時期にいったんセックスが途絶えると、セックスをしない日が続いてもさほど気にならない。」という女性もいらっしゃるかと存じます。

これがエストロゲンの影響と思われます。排卵期から生理前は、一般にエストロゲンの分泌が多い時期なので、性行為の受容性が高いので「気分」になりやすく、さらに、人によっては性経験やパートナーへの愛情から「さびしい気持ち」になる、という状況が考えられますし、恋愛のパートナーが出来ればエストロゲンの分泌も活発になると思われますので、自ずと「きれいに」なって、「さびしく」なりやすくなるのだろうと思われます。

「女性が恋をするときれいになる」「恋多き女性はきれいでセクシー」という説は、俗説でなくエストロゲンの裏づけがあると考えております。

 

女性の性機能障害(性欲障害)に対するテストステロンの単回投与により、「テストステロンのピーク到達3~4時間後に、性的感覚および性欲の上昇が報告」とのことですが、女性の性機能障害に対して単回投与であれば連続使用にともなうリスクを最少化しながら望ましい効果が得られる事が期待されるため、弊社のテストステロン・クリーム「グローミン」でも同様の有用性が期待できると考えられます。
グローミン塗布後の健常男性での血中プロファイルによれば、塗布後1~2時間でピークを迎えますので、女性も同様の動態であれば、塗布後4~6時間後に性的感覚および性欲の上昇が認められるのかも知れません。
また、女性に対するテストステロンの連続的な投与については様々なリスクが指摘されており、全般的に消極的な雰囲気を感じておりますが、頓用の単回投与でも有効であるなら、積極的にご利用いただける事が期待されます。
現状では「グローミン」をこのような目的でご使用いただく事をお勧めできませんが、今後の臨床研究を通じて根拠(エビデンス)を整備したいと考えています。