現代の進化論には、愛情や友情や自己犠牲など、人々が大切と考えるものを根こそぎにしして、身も蓋もない『利己的な遺伝子』に還元してしまう冷たさがある。
進化論的に言えば『愛』は異性とセックスをして子孫を残すために作られた感情だ。
男と女では生殖機能が違う。男の場合は精子の放出に殆ど労力がかからないが、女性は受精から出産までに9か月もかかり、無事に子供が生まれたとしても更に長い授乳期間が必要になる。子供を作るときの投資金額がオスとメスではかけ離れている時、進化論は最適な生殖戦略が性によって異なるはずだと予想する。
ローコストの男がより多くの子孫を残そうとすれば、できるだけ多くの女性をセックスすればいい。それが進化の最適戦略だ。それに対してハイコストの女性はセックスの相手を慎重に選び、子育て期間も含めて男性と長期的な関係を作るのが進化の最適戦略になる。
これまで人類は、文化や音楽、映画などで男と女の『愛の不毛』を繰り返し描いてきた。しかし進化心理学は、恋人同士が分かり合えない理由をたった一行で説明してしまう。
すなわち『異なる生殖戦略を持つ男女は利害関係が一致しない』のだ。